融け合う夢と現〜獏の梦〜

「うふふふっあはははっあははははははっ」

闇の中、それは嗤う。

「すごいねぇ。おどろきだねぇ。あんな絶望を押しつけられて、まだ君達は戦うんだねぇ」

人なのか、人でないのか、どちらとも言えない“それ”。

「まるで少年漫画の主人公だねぇ。仲間を集めてレベルアップでハッピーエンドのエンドロール?」

形は人。細身のそれは男性に見える。バクの被りものをしているせいで顔は分からない。

「間抜けだねぇ。どんな事をしても、何度戦って勝てないのにねぇ」

気配は異形。笑っているのに、およそそこから人らしい感情が感じられない。
まるでヒトでないものがヒトのまねをしている様な。越えてはならない一線を越えた様な。
何かが欠落した、嗤い声。

「君達は何も分かっちゃいない。だからな〜んにも出来やしない。だって全ては、決ま、っ、て――」

ふと、それの声が途切れる。突然もがくように手を震わせ、酸欠の様に浅い呼吸を繰り返す。

「――ぁぁあ、ソウだ。オわ、らせ、ない」

がらり、と声の質が変わる。先ほどまでの人形じみた声から一転、地獄のような怨嗟がこもった声へ。

「ソノタメ、に。ぁぁあ、クソう、ダマし――が、タダし、いと――」

ぶちり、と何かが壊れる音がした。同時に、それの声も止む。
数瞬の沈黙、それから再びクスクスクスと笑い声が闇に響く。
誰の手も届かない闇の中、それはずっと嗤い続ける。
くすくすくすと、全てを嘲笑う様に。


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