白と黒の二重奏〜嵐の前の静けさ〜
くすくすくすくすくす。夜の夢路町に笑い声が溶ける。
クスクスクスクスクス。
時の止まった黄昏の夢路町に嗤い声が響く。
「何も知らない奴らは幸せだな」
夜風に髪を躍らせながら、少年は呟く。
『初めから全部全部無意味なのに、人ってホントにおばかさんよね!』
夜闇に身を躍らせながら、少女は叫ぶ。
「先の見えない現実は、辛いだけだろう」
憐れむように少年は告げる。
『望む結末のない夢は悲しいでしょ?』
嘲るように少女は告げる。
「裏切られる現実を、受け止めきれない真実を視る位なら」
少年と少女は同じ場所に居ない。
『見たい現実を――甘い甘い夢を一緒に見ましょう?』
互いに一人。しかし、独りではない。
「もうすぐ世界があの人の夢になる」
声も届かない二人は、だが不思議と聴こえているかのように言葉を紡ぎ続ける。
『貴方達も可愛いお人形になってあの人と一緒に夢見ましょう?』
影の無い少年と、影にしかいない少女。
鏡合わせの世界で二人は笑い、嗤い、そして消えた。